「チーム佐渡」の一員として島民の健康増進に貢献していきたいです。
佐渡総合病院 内科医長荒生祥尚 先生山形県出身・平成22年 新潟大学医学部卒業
現在のお仕事について教えてください。
新潟市民病院、新潟大学医歯学総合病院、大学院での研究を挟んで、2016年から佐渡総合病院に勤務しています。消化器内科で内視鏡による検査と治療を中心に診療に携わっています。私は山形県出身で大学進学で新潟に来たのですが、赴任まで佐渡を訪れたことがなく、赴任を決めた時には正直なところ不安もありました。が、来てみると離島という感じではなく、海辺の町にいる感覚ですね。地元に似ている感じです。新潟市から高速船で1時間と近いですし、何しろ広い。山も平野も川もあります。
面積は、東京23区の約1.5倍くらいですね。
佐渡総合病院はそこに暮らす5万6000人の健康を守る中核病院ですから、責任はひしひしと感じています。特に、佐渡島内には消化器救急疾患に対応できる病院が少ないため、吐下血や急性腹症に積極的に対応しています。また、ここは新潟県の中でも高齢化が進んでいて、当病院もそのための対策を進めてきました。2011年に現病院に移転した際に、電子カルテの導入や検査・治療機器を充実させて、救急搬入や搬送に対応できるヘリポートも設置しています。そして、2012年には、そうした機能をベースに、島内の医療機関、保険薬局、介護施設を双方向に結ぶ地域医療連携ネットワークが稼働しました(ひまわりネットワーク)。同意された住民のみなさんの情報を共有し、関係者が連携して医療や介護サービスを提供するもので、全国でも先進的なモデルとして評価されています。
消化器内科医として高齢社会にどのように関わっていきたいですか。
もちろん外科の先生のバックアップの下ですが、手術にもっていかずに完結できる内視鏡治療は、身体に負担をかけないという点で高齢者の治療に向いていると思います。実際に当病院では治療実績も多く、昨年は、上部消化管内視鏡手術は約3300件、下部消化管内視鏡手術は約1450件を実施しました。悪性腫瘍では、早期胃癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を約70件行いました。胆膵内視鏡の検査や治療が一般化し、かつては手術でしか救えなかった症例が内視鏡で対応できるようになるなど、この分野は進歩が著しく、適応範囲も広がっています。だから、一生勉強です。大変なこともありますが、勉強したことがダイレクトに患者さんの健康増進につながるので、やりがいがあります。
これからの目標を教えてください。
消化器内科を選ぶきっかけとなり、今も仕事の中心である内視鏡治療を究めていきたいです。私は現在は早期胃癌しか内視鏡治療が出来ていませんが、早期食道癌や早期大腸癌などの内視鏡治療、また先ほど述べた胆膵疾患の分野でも、超音波内視鏡を用いた診断や治療にも従事していきたいです。また、今後、中堅といえる卒後年数にもなってくるため、自分自身で勉強するだけでなく、後輩や研修医にもしっかりと技術を身に付けてもらえるよう、指導にも力を入れたいと思っています。
昨年から、私は内科医長をさせていただいています。科全体のマネジメントや、また他の診療科や島外の医療機関との連携にも関わるようになりました。その中で気づいたのは、他部署との連携や、自身のできる範囲を把握することの大切さです。自分たちで解決すべき問題は自分たちで解決することはもちろんですが、どうしても専門的な治療や、ICU管理が必要な患者は、新潟大学に相談し、お願いすることも多いです。どうしても当院では、ICU室がなかったり、輸血数が不足していたり、また本土とは海で隔てられているため、搬送適応を客観的に判断する必要があります。特に今年は、内科医長をさせていただいていることで、いろいろ考え、勉強させてもらい、自分自身の成長にもつながったのではないかと考えています。
プライベートでの目標は、佐渡を楽しむことです。佐渡に赴任して3年目、だいぶ佐渡島内の観光地は巡らせていただきました。また魚や米がおいしいのはもちろん、佐渡に来てから日本酒を飲めるようになりました(笑)。子どもも生まれ、自然を満喫しながら佐渡ライフを過ごさせていただいています。
後輩の医師へのメッセージをいただけますか。
消化器内科医に必要な手技、内視鏡やエコー、穿刺治療などは、見ているだけではどうしてもつまらないと思います。そして、大病院では研修医もレジデントも多いので、実際の手技のチャンスが少ないとはよく聞く話です。しかし当病院はいわば少数精鋭、研修時からなるべく手を動かしてもらうので、習得も早いと思います。何を学びたいか、どういう実績を得たいかを考え、それができる場を選ぶことは、仕事でのやりがいに繋がっていきます。自分自身の経験から、私はそう思っています。
(所属等は執筆時現在です。)