麻酔科医は縁の下の力持ち。術中の患者管理に力を発揮
上越総合病院 専攻医小出燎平 先生新潟県出身・令和3年 新潟大学医学部卒業
臨床研修も現在の病院で受けられましたね。
上越総合病院は私の地元の病院です。今後は転勤もあるだろうから、臨床研修は実家のある上越で受けようと思っていました。また、大学5年生で1カ月間、内科で実習を受け入れてもらったときの印象がよかったのも理由の一つです。院長の研修医を育てようというマインドはもちろん、内科の先生方も教育熱心で、細かなところまでレクチャーしてくださり、ここでキャリアをスタートしたいと思うようになりました。「一人前以上の医師にしてくれる場所だ」と感じたんです。
麻酔科を選んだのは研修時ですか。
研修のはじめは神経内科に興味を持っていました。学生の時から、診療所見を積み上げて理論的に診断に至る過程にひかれていたんです。その後、ローテートで麻酔科に行って「この仕事は自分に向いている!一生やっていける!」と気持ちが変わりました。縁の下の力持ちのような存在であること、技術が必要なことが、もともと「わかる人にはわかる」「一生懸命さを前面に出さない」ことが好きな私に刺さったんだと思います。 また、手術開始時の気管挿管などピリッと緊張する瞬間と、その後の呼吸や血圧を管理する落ち着いた時間の組み合わせという時間軸、メリハリ感も自分に合っていると思いました。臨床研修2年目の夏に専攻を決め、12月の募集を待ちました。
現在の仕事内容について教えてください。
上越総合病院では、外科、産婦人科、眼科、脳神経外科、整形外科、泌尿器科、皮膚科、腎臓内科、歯科口腔外科で手術が行われ、4名の麻酔科医が麻酔管理を行っています。多くは予定された手術ですが、緊急手術に対応することもあります。 今は、全身麻酔や脊髄くも膜下麻酔、硬膜外麻酔、末梢神経ブロックなどの技術を高めること、手術中の緊急事態に対応できるようトレーニングを積むことを心がけています。
やりがいを感じるのはどういうときですか。
患者さんの痛みの管理がしっかりできたときですね。たとえば、大腿骨骨折の手術は一般的には全身麻酔で行われますが、人工呼吸器がつけられない患者さんに脊髄くも膜下麻酔を用いたことがありました。「痛い痛い」と苦しんでいた患者さんが、麻酔後に痛みが引き、落ち着いて手術が受けられたときに手ごたえを感じました。また、術後には傷が痛まないように硬膜外麻酔を行いますが、目を覚ました患者さんの「全然痛くない、大丈夫です」という言葉もやりがいにつながります。痛みをコントロールできると回復も早く、手術の翌日に歩ける人もいて、そういう光景を見ると「痛みをしっかり取ったな」とうれしくなります。
今後の抱負を教えてください。
集中治療に興味があるので、ICUでの患者さんの管理に関わりたいと思っています。救急科と麻酔科が連携して患者さんの命を守り、安全で快適な医療を提供することを目指しています。 日本では長く麻酔科医不足が問題とされていますが、麻酔科医の数自体は増えてきています。一つの手術は一人の麻酔科医が管理するように徹底されていますし、長時間の手術は交代で対応することも可能になってきています。もう少し人数が増えれば、ワークライフバランスの取れた環境が実現します。仕事の内容も勤務体制もオンオフがはっきりしているのでおすすめですよ(笑) 後輩、待っています!
医師を目指す方へメッセージをいただけますか。
医師になってつくづく思うのは、国語の力、文章の力が必要だということです。他科の医師へのコンサルテーションを書くときや他病院へ紹介状を書くときに、論理的な文章を書けなければ正確に患者さんの状況を伝えられません。また、術前診察で患者さんに麻酔方法を説明するとき、わかりやすく伝えるには国語力が必要です。つまり、大学入試では理数系学科の勉強が必要で、大学では病気や術式など暗記力が求められ、実務では筋道を立てて考えて話す論理力と表現力が重要だということになります。だから、いろいろなことに興味や好奇心を持って、守備範囲を広げてください。 専攻を決めるときは、やりたいことに加えて、どういう働き方をしたいかについても考えてみるといいと思います。医療の世界は、メリハリのある働き方ができる診療科、細やかな観察や管理が必要な仕事、刺激の多いタフな現場など、実に様々です。一生続けていく仕事ですから、実習やローテ―トの中で「自分に合っている」科を探してください。
(所属等は執筆時現在です。)