先輩医師インタビュー 分野 消化器内科
2019年09月18日

患者さん一人一人のライフサポーターになりたい。

村上総合病院 消化器内科医長中村隆人 先生新潟県出身・平成21年 新潟大学医学部卒業

医師を目指したのはなぜですか。

父が外科医で、幼い頃は週末になると、母が私たち子どもを連れて父の単身赴任先の病院へ行くという生活を送っていました。地方の病院で、病院の職員や現地の人たちとの交流を見聞きする中で、医師とは感謝され尊敬される仕事なのだと感じ、憧れを抱きました。父のような、また、その頃に夢中になっていた「ブラックジャック」のような外科医になりたくて医学部に進学。しかし、研修医のとき、消化器内科の先輩に心を奪われ、志望が変わりました。

変化の背景には何がありましたか。

消化器内科では、その頃、総胆管結石への医療や早期がんへの内視鏡手術などの手技やデバイスが発展していました。内視鏡による介入によって、患者さんをより合併症なく確実に社会復帰させるということに前向きな先輩方を目の当たりにして、私もその波に乗って活躍したいと思ったのです。消化器外科と消化器内科では、メスを用いるか内視鏡を用いるかの違いで、ほとんど変わらない楽しさがあるとも思いました。

そして、もうひとつが検査科としての強みです。現代の医療では、例えばがんの画像診断では、CT、MRI、体外超音波、超音波内視鏡など様々な医療機器があります。一般的に、先進的な治療が出現すると、それ以前の治療は廃れてしまうのですが、検査は違います。より客観的で確実な診断のため、古典的な検査が先進的な検査と併用されることが多く、また、身体へのダメージが少なくローコストであることからスクリーニングの分野でも活躍しています。ということは、努力して検査手技を取得したら、息長く活躍できる。これは研修医時代の先生に教えていただいたことですが、それがストンと腑に落ちたことも、進路選択の決め手になりました。

新潟県の医療現場についてどう感じていますか。

地域医療に不安を抱く人もいるかもしれませんが、私は、中心部・僻地、3次病院・2次病院と幅広く経験することは、医師としての自分自身の価値を高めてくれるものだと実感しています。地理的な要因、人々の暮らし方はもちろん、そういう環境で求められる医療、医師として果たすべき役割など、様々な環境に身を置かなければ得られないことが多いからです。

また、新潟県の消化器内科では、医師が独り立ちできるよう責任を持って育て、キャリア形成を支えてくれます。その背景には、医療従事者が充足しているとは言えないという状況があるのは事実ですが、私自身はよい指導者と信頼できる仲間に恵まれ、プラスだったと感じています。

これまでに取り組んだことは、村上総合病院で3次病院クラスの内視鏡治療をすること。私が赴任した当時は内視鏡処置が行われていない領域も多かったので、当初、コメディカルが不安感や負担感を訴えることもありました。しかし、患者さんがすぐに回復するというメリットを実感して、理解や共感が進み、積極的に取り組む土壌ができました。やりがいを感じましたし、地域に貢献できたのではないかとも思っています。

これからの目標についてお話しいただけますか。

地域医療では、予防医学の浸透が不十分で救えない生命があること、老々介護や介護難民、膨れあがる医療費などの問題を切実に感じます。地域に密着した、継続的な支援が必要なのだと思います。将来的には、患者さんにより近い距離の医療者として、一人一人のライフサポーターを目指しています。開業医の立場で、予防はもちろん、患者さんの不安を取り除き、その人に必要で適切な医療が行われるように力を尽くしたいと思っています。

医師を目指す人へメッセージをお願いします。

医師は生命に関わるという一点で人々に感謝される職業です。患者さんの為になりさえすれば喜ばれるという、恵まれた職業です。だからこそ、自分がなぜ医師免許を持って働いているか、その自問自答を忘れずに行動していかなければならないと思います。これからは超高齢社会、医療費増大などの社会問題も踏まえたうえでの最善を模索することも必要です。難しいことも多いですが、やりがいもまた多い医師という仕事を一緒に楽しみましょう。

(所属等は執筆時現在です。)