先輩医師インタビュー 分野 内科
2019年12月02日

地域医療で学んだことを糧に次のステップへ。

魚沼市立小出病院南雲駿 先生新潟県出身・平成25年 秋田大学医学部卒

内科を目指したきっかけを教えてください。

地域に医師が少ない環境で育ったせいもあり、医学部に進んだ頃は漠然と「医師として地域の役に立てたら」と思っていました。呼吸器内科に進んだきっかけは、初期研修で魅力的な先生に出会ったことです。熱心な診療の姿勢や指導に大いに影響を受け、同時に、守備範囲が広く様々な病気を診る科だとわかり、選択しました。2019年4月に小出病院に赴任し、今は一般内科を担当しています。

ご専門の喘息とはどんな病気ですか。

小児でも大人でも喘息患者は多く、治療が進歩した今でも亡くなる人はゼロにはなっておらず、油断のできない病気であることに間違いはありません。喘息は症状も原因もさまざまで、まだ解明のできない部分もあります。複数の要因が絡み合って発症・発作につながることもあるため、診断では、検査だけではなく、その人の生活や環境などについて丁寧に話を聞き、原因を突きとめて治療方法を構築します。それが回復につながった時はやりがいと達成感を感じます。

小出病院はどんな病院ですか。

2015年の新潟県魚沼地域の医療再編に伴い、小出病院は地域住民のためのプライマリケアを担う拠点として生まれ変わりました。地域の課題としては、都市部よりも高齢化が進み、独居高齢者が増加していることから、病気の早期発見や早期治療、自宅での療養が難しいという問題があります。実際に、かなり重症になってから来院した患者さんがいました。いったんは人工呼吸器をつけるほど重篤でしたが、何とか回復させることができ、退院にこぎつけたときにはほっとしました。

高齢者になると肺炎の罹患が増えます。誤嚥性肺炎は防ぐことはできますが、食事の用意にしろ口腔ケアにしろ周囲の協力がないと難しい。かといって、施設ではなく自宅で過ごしたいという患者さんの気持ちや考え方は大事にしたい。そのためには地域の医療連携、医療と介護の連携が必要です。私自身も時にはリハビリや訪問看護の部門と連携を図り、介護の提案なども行い、患者さんが地域で安心して暮らせるサポートを心がけています。

これからの目標について教えてください。

研究については、今年初めてアメリカでの呼吸器内科学会に参加したのですが、喘息について学ぶ貴重な経験になりました。今は文献などネットで検索でき、地方にいてもタイムラグなく新しい情報は手に入れられるのですが、実際にその場で発表に立ち会えるのはいい刺激になりました。こうした機会を積極的に活用して、専門を極めていこうと思っています。

そして、地域医療を担う医師として、科や専門に関わらず、「体の不調で困ったことがあったら、南雲に相談してみようか」と地域の人たちに言ってもらえる存在になりたいと思いいます。そのためには、患者さんの話をきちんと聞くことに勝るものはないと思っています。話の中で思いがけないことがわかり、それが治療に活かせたことは少なくありません。外来は限られた時間なので、コミュニケーション力をもっと培っていかなければと思っています。

医師を目指す人へメッセージをお願いします。

専門は、単純に自分がやりたいこと、興味があることを選ぶのが一番です。でも、私自身がそうだったので、進路が定まらない人へ一言。どういう環境で働きたいかという視点で考えてみてはどうでしょう。患者さんという一人の人を相手にするには、患部だけでなく、家族や生活の状況も含めたその人の背景がわかったほうがいい。患者さんの背景を知るという、医学以外のアプローチについて勉強しやすいのは地域の病院ではないかと思います。また、新潟県のように広い県では、地域によって医療環境や患者さんの考え方、暮らし方が違ってきます。様々な地域での経験が教えてくれることはきっと自分の糧になります。みなさんに地域医療の魅力を知ってほしいと思います。

(所属等は執筆時現在です。)