先輩医師インタビュー 分野 小児科
2021年05月22日

新潟県内のどこでも同じ治療・サポートが受けられる体制を

魚沼基幹病院 小児科 医長田嶋直哉 先生新潟県出身・平成19年 新潟大学医学部卒業

小児科を目指した理由、その中で専門とする分野を選んだ理由を教えてください。

小6の時に小児ぜんそくで入院したことがありました。その時に小児科の先生が魔法使いのように思えて、かっこいいなと思ったことがきっかけで小児科を選びました。自分がぜんそくだったこともあり、患者さんが増加しているアレルギーの診療に主に取り組んでいます。県内の病院勤務の後、特に食物アレルギー診療に力を入れているあいち小児保健医療総合センターに2年間国内留学しました。その後、新潟に戻ってきた時から魚沼基幹病院に赴任し、4年目になります。

食物アレルギーの患者さんは多いですね。

そうですね、少子化が進んでいますが患者数は増えています。様々な要因がいわれていますが、最近、新たに肌の荒れたところからアレルゲンが体内に入り、食物アレルギーに繋がっていく、経皮感作という概念が明らかになりました。泡で優しく洗う、そして保湿に努めるなどスキンケアを行い、肌荒れを防げばアレルギーの予防にもなるとされています。予防に関しては、今もさらに研究が進んでいるところです。

食物アレルギーは、地域により食習慣が異なるせいか地域性があるようです。魚沼地方はクルミを食べる機会が多いので、クルミアレルギーのお子さんが多いように感じています。

アレルギーの治療にはどのような方法がありますか。

アレルギー性鼻炎の治療として舌下免疫療法を行っており、食物アレルギーでは積極的に食物経口負荷試験を行って、その後に経口免疫療法に取り組んでいます。経口免疫療法は時間がかかるので、本人や家族に寄り添い、お子さんによっては高校生になってからも小児科で診ていくこともあります。

鶏卵アレルギーのお子さんから「将来、パティシェになりたい」と言われたことがあり、何とか治して、その夢を叶えられるようにしてあげたいと強く思いました。小児科は未来のある子どもたちに関わる医療なので、こちらも一緒にその夢や希望に参加する感じがしてモチベーションになっています。

今、目指していらっしゃることは何ですか。

新潟県全体としての小児アレルギー診療を発展、向上させることです。食物アレルギーを持つ子どもとご家族は、毎日のように症状が出るかもしれないというリスクを抱え、不安を持ちながら生活しています。買い物や園・学校で過ごす時間、外食の場面などで課題はまだまだ多いです。将来的には新潟県全体のデータをまとめたりして、行政や教育、保育現場と連携して大きな動きに繋げていければと思っています。生まれた場所によって治療やサポートに差が生じてしまうのは本来であれば望ましいことではないと思うので、県内どこでも同じような治療が受けられるような体制の実現に貢献できればと思っています。

医師を目指す方へメッセージをいただけますか。

新潟県は医師が少ないこともあり、とてもありがたいことに地域の人たちは温かく迎え入れ、接してくれます。県内でも医師不足が特に深刻だった魚沼地方で平成27年に開院した当院は、それまで提供できなかった救急医療や高度医療を担う地域の中核病院として、住民の皆さんから期待されています。

小児科は、治療した子どもの成長を見られるのが大きな魅力です。自分が担当していたお子さんがスポーツ大会で活躍する姿を見つけたりすると、将来は五輪にも出てほしいと思ってみたり、あるいは医師や看護師など同じ医療従事者として働けたらなとか、勝手に夢を見ています。また、自分の子どもが生まれた時には、患者さんのご家族は親としての先輩なので色々と教えてもらったり参考にさせてもらったりしました。小児科医をしていると、仕事とプライベートが自然にリンクしている感じがしますよ。

(所属等は執筆時現在です。)