地域枠での実習・勤務で総合的な見方や考え方が学べた
新潟大学医歯学総合病院田中健太郎先生新潟県出身・平成28年 新潟大学医学部卒業
新潟県地域枠の利用を決めたのはなぜですか。
医師を目指そうという思いは、中学時代には漠然としたものでしたが、高校時代に固まりました。働くなら地元がいいなという気持ちと、新潟県は医師不足だから役に立ちたいという気持ち、また、オープンキャンパスで訪問して新潟大学に憧れを抱いていたことで、新潟大学を志望しました。友人の間では地域枠は倍率が低いのではという不確定情報がありましたが、真偽のほどは不明です(笑)。
地域枠制度では在学中、どんな経験をしましたか。
1年生の時から県内の病院を回る夏季実習がありました。毎年、いろいろな地域に行き、多くの先生方とつながりを築けましたし、患者さんと直接話せて初めて「地域医療」が実感できました。高校生の頃は「地域医療」と聞いてもピンときていなくて、どういうことをするのかが見えていなかったんです。それが実習を通してクリアになりました。
指定勤務ではどちらに赴任されましたか。
新発田病院で初期研修を受け、JA新潟厚生連佐渡総合病院と長岡中央綜合病院を経て、新潟大学医歯学総合病院に戻り、この後、地域病院赴任が決まっています。佐渡に赴任中、週に一度、両津病院の内科を担当しましたが、この時に、環境により求められる医療が異なるということを経験しました。たとえば大学病院は重い疾患の患者さんを診るので、加齢や風邪などの症状を見ることはありません。でも、そういう患者さんは確かに存在し、地域の病院では、そうした不調に悩む患者さんに寄り添うことが重要でした。よくある疾患を見逃さず、きっちり治さなくてはならない。疾患だけを見るのではなく、併存疾患、合併症、患者さんの家族や社会的な背景などを総合的に見て、治療していかなければならない――これは地域枠だからこそ経験でき、気づけたことだと思います。医師として成長できたと実感しています。
呼吸器内科を選択されたのはなぜですか。
呼吸器は内科の中では比較的診る疾患数が多いこと、内視鏡やカテーテルなどの手術が少なく患者さんと向き合う時間が多いこと、つまり、より多くの患者さんを診られることが魅力的に思えて選びました。
今、臨床の7年目に入り、これから地域病院で勤務します。これまでの勉強や経験はすべてこの3年間のためにあったのだと私は思っています。やっとここまできました。思いっきり力を発揮し、やりがいを実感したら地域病院勤務を継続し、もっと学びたいと思ったら、大学に戻るか留学するか決めようと思います。
医師を目指す方へメッセージをいただけますか。
医師にとって必要なことは3つあると思っています。まず、コミュニケーション力。患者さんがいてこその医療ですから、しっかりと聞いて丁寧に伝えるコミュニケーションは基本であり、重要です。その次は、読み書き、つまり勉強を続けることです。数年ごとに疾患のガイドラインが変わると診断や治療の基準も変わり、また、医学書は増え続けるので、医師を続ける限り勉強が続きます。最後は、自分から動いていく行動力です。気になることがあるときに動いてみると小さなきっかけに出会えて、それが方向を示してくれたり、何かをもたらしてくれたりするもの。地域枠利用もそういうことじゃないかなと思います。利用することで見えてきたものがありましたから。小さなきっかけを活かして頑張ってください。
(所属等は執筆時現在です。)