新潟県女性医師ネット・スペシャルトークセッション
新潟県女性医師ネット
(平成26年2月15日開催)
メンバー
新潟県立はまぐみ小児療育センター 小児科 奥村理恵先生
新潟大学医歯学総合病院 研修医 中野智成先生
厚生連新潟医療センター 研修医 原芙美先生
新潟大学医学部医学科 5年 有松亜美さん
新潟大学医学部医学科 5年 中村真衣さん
コーディネーター
新潟県女性医師ネット 代表世話人 佐々木綾子先生
(新潟県福祉保健部参事(女性医師支援担当) 村上地域振興局長 村上保健所長)
「スペシャル・トークセッション」スタート!
佐々木:新潟県女性医師ネット代表世話人佐々木です。今日は村上市から来ました。今、村上市ではソチオリンピックで銀メダルをとった平野歩夢選手の話題で盛り上がっています。産婦人科医でしたが、県職員になり12年になります。子どもは3人で、孫が6人います。
奥村:新潟県立はまぐみ小児療育センター小児科の奥村です。出身は埼玉で、夫は新潟出身です。県外で初期研修修了後、結婚して新潟に来ました。卒後7年になります。はまぐみ小児療育センターに来て子どもが産まれて、1年半育休を取って、復帰して1年になります。夫は厚生連新潟医療センターの医師です。
中野:新潟大学医歯学総合病院研修医中野です。今は、協力型病院の新潟県立中央病院で研修しています。プライベートでは、10月に子どもが産まれました。ちょうど首も座って、かわいい頃です。僕に似て食欲旺盛なのか子どもは4か月で9kgもあります(笑)。遺伝なのかなあと思って、そんなわが子が可愛いと思って仕事をしています。
有松:新潟大学医学部医学科5年の有松です。出身は新潟で、硬式テニス部です。保健所実習で村上保健所に行った時には、佐々木先生にお世話になりました。今日は先生方からいろいろなお話が聞けるといいなと思って来ました。
原:厚生連新潟医療センター研修医の原です。新潟大学出身で、生まれも新潟です。新潟医療センターだけでなく、呼吸器内科は西新潟中央病院、救急は埼玉医科大学総合医療センターで研修します。将来の結婚や出産はまだ、考えていないので、今日は先生方のお話を聞いてみたいと思います。
中村:新潟大学医学部医学科5年中村です。出身は京都で、大学で初めて新潟に来ました。もうすぐ6年生なので、最近は進路について考えることが多く、今日はいろいろなお話を聞けたら嬉しいなと思って来ました。
それぞれの現在(いま)と将来
佐々木:中野先生の奥様のご職業は?
中野:元々看護師です。国立がんセンターで勤務していたのですが、僕と同じ新潟大学出身で、新潟に戻って来ました。僕は栃木出身で、奥さんは秋田出身です。どちらの親も新潟にいないので、2人仲良くやっています。逆に気が楽な面もあります。新潟県立中央病院の研修になったので、上越に住居を移しています。今は、いつも奥さんにいろいろ迷惑をかけています(笑)。
佐々木:原先生は、将来の事を何か考えていますか?
原:まだ研修医なので勉強もしたいし、今の生活で子どもができるのが想像できないです。卒後3、4年目も入局して働きたいし、でも30歳までに1人産みたいし、夢ですが…。
奥村:そうですね。学生の頃は、いつ結婚して、いつ子ども産んでと考えていたなあと思います。でも、なかなかそう思い通りにはいかないものなので、その時できることをするしかないです。…そうはいっても、未来ビジョンを考えちゃうんですよね。私は卒後5年目で出産しました。今はフルタイムで働いていますが、短時間勤務制度を利用して、当直免除してもらっています。出産はもうちょっと後がよかったかな、専門医の資格を取っていないので、取ってからがよかったかな、とも思います。でも、あんまり後になるのも…。でも、こればっかりは…。新潟に来て、最初1、2年は知り合いもいないし、いきなり妊娠は心配でした。当直で呼ばれたり、結構仕事もハードでした。夜1人になるプレッシャーや呼ばれるプレッシャーがありました。でも、それが良かったし、仕事は楽しかったですね。その後、はまぐみ小児療育センターに異動して妊娠しました。
佐々木:妊娠した事を言う時はいかがでしたか?
奥村:いつ言うか迷ったのですが、当直の事もありましたし、つわりがひどくて、つわりが出てきた段階で職場の上司と医局に言いました。
佐々木:迷惑になるんじゃないかとか、そういうことをいろいろ考えると大変ですよね。みんな、周りに気を使いますよね。
奥村:もちろん妊娠がダメという事はないですし、いろいろ考慮してもらえるのですが・・・。
原:卒後3年目で出産する人も多いですね。キャリアの遅れが気になるのですが…。
奥村:心配する気持ちはよくわかります。最初はすごく気にしていました。同期と比べれば1年以上遅れるのですが、ここまでくると、1~2年遅れるというよりは、それぞれどこを目指していくのかという事になっていくと思います。最初、一般小児科で3年位かなと思うのですが、その後それぞれのスペシャリティとか目指す方向が出てくるので、一概にキャリアが遅れるという事ではないのかなと思います。小児科という特性もあるのかもしれませんが、子どもを産んで育てたという経験が大きいと思います。他の科にも当てはまることだと思います。でも、復帰する前は、復帰前と同じように医師として過ごせるのかなという不安もありました。
佐々木:育児休暇を長めに取ったのですね。
奥村:1年半の育児休暇は長い方だと思うのですが、4月復帰を目指しました。子どもと一緒にいられて良かったと思うのですが、働かないで1日中家にいて家事をして、子どもと向き合うというのも大変です(笑)。夫が新潟県立新発田病院にいたので、一緒に新発田市にいました。最初は、周りは知らない人ばかりでした。ママ友もできて付き合いも楽しかったのですが、それはそれで歳をとってから友達を作るのは大変だなあと思う事もありました。今は家事代行サービスを週3回お願いしています。主婦は大変です(笑)。(中野)先生の奥さんも大変だと思います。
佐々木:今まで仕事をしていたのであれば、ストレスがあると思いますよ。
中野:はい…(笑)。
奥村:社会的に孤立していたというわけではないのだけれど、自分の時間がなくなってそのギャップが大きかったですね。第一線で仕事をしていたところから、出産して家庭に入ったので、生活は激変しました。子どもは可愛いのだけれど、保育園に預けた方が自分の時間はできますね。
中野:うーん…(笑)。
奥村:4月からまた、十日町市に夫と一緒に異動になります。ここ数年は、単身赴任ではなく、科が違っても夫の異動を考慮して、女性医師も一緒に異動するケースも多いようです。ありがたいなあと思います。いつ出産しても何とかなります(笑)!
佐々木:(有松)さんは、将来の事を何か考えていますか?
有松:何にもはっきりしていないです。例えば、相手の出身が違う県だったり、希望する研修病院が離れた場所だったりしたら、どうなるのかなと思うのですが…。
奥村:みんな不安な気持ちはありますよね。
佐々木:離れ離れで結婚してもいいと思うわ。老舗の和菓子屋さんと結婚した国のキャリア官僚の女性がいますよ。彼女は数年新潟で仕事をしていましたが、今は県外で仕事をしているようです。お子さんもいますが、新潟にはいないようです。でも、彼女は仕事を辞めないと思いますよ。新潟県女性医師ネットでインタビューした女性医師でも別居婚の先生がいましたよ。
奥村:私の知っている女性医師で、週末婚の人もいますね。
佐々木:(中村)さんは、将来の事を何か考えていますか?
中村:結婚はしたいです。私にとって家庭を持つことは幸せなことなので、家族を持ちたいなと思います。相手は医師ではなくてもいいけれど、相手が同じ職業だと話が分かってもらえてうまくいくのかなあと感じています。
結婚するなら、誰がいい?
佐々木:女性医師は医師同士で結婚する人が多いですね。
原:佐々木先生の旦那さんは医師ですか?
佐々木:夫は大学の同級生で、秋田出身です。
奥村:女性医師は出会いがそもそも少ないですね。私は日本医科大学出身なのですが、大学の後輩には美容師やバーテンダーと結婚した人もいます。でも、圧倒的に医師同士が多いですね。
佐々木:女性医師と結婚する男性医師も必要ね(笑)。
中野:生活力がないと多分無理ですよ。僕は家事とか何もやらない方のタイプなので。
佐々木:やってほしい?
中野:やってほしいタイプです。自分の事は自分でやれってって言われても、僕は全然できないし、女性医師とは無理ですね(笑)。
中村:そういう男性が圧倒的に多い気がします。
佐々木:そうですね。男性医師にしてみれば、仕事も大変なのに、女房も医師じゃ困るって思いますよね(笑)。
奥村:初期臨床研修制度が始まってからの方が、早く結婚する人が多い気がします。でも、女性医師は、出会いの場が限られますね。
佐々木:そのうちと思っているとあっという間に歳をとるわよ。
中村:がんばらないと。
奥村:出産、子育ては体力的にきつくなりますしね。友達だといいながら、しばらくして結婚する人がいますからね(笑)。こればっかりは、わからないですね。巡ってきたら逃すことはないです。必ず見つかります!
子育て・家事は誰がする?
奥村:夫は一人暮らしが長いせいか、割と家事ができます。私も家事が得意な方ではないので、元々求められていないです。夫は、私が家にいて自分ばかり仕事をしていると引け目を感じるようです。保育園に預けて子どもと離れるのが寂しかったので、仕事を辞めようと思ったこともあります。可哀そうな感じがして…。保育園に預ける時は不安でしたが、預けたら気が楽になりました(笑)。今思うと、風邪をいっぱいもらってきたけれど、なんで可哀そうと思ったんだろう?と。土日も行けばいいのに!って、思う事もあります(笑)。一時保育に抵抗を感じる人もいますね。
佐々木:長い目で見ると、子どもたち同士で成長することもありますよね。でも、預ける事に抵抗のあるのは何でかしら?日本人は強いですよね。自分が育てなきゃいけないと思うんですよね。中村さんもそう思いますか?
中村:私もそう思います。自分の子どもの頃を考えると、両親とも共働きで、お母さんが専業主婦のお家が羨ましかった時期がありました。家に帰るとちゃんとご飯が用意されて…みたいなことが羨ましくて。自分の事を今考えると、仕事もしたいので、仕方なかったと思えるのですが。
奥村:私の母は専業主婦なのですが、自分が育てなきゃいけないというよくわからないプレッシャーを感じます。3歳までは…とか。(佐々木)先生はいかがでしたか?
佐々木:私は姑がいたので、産みっぱなしでした(笑)。母乳もやらなかったし、自分が育てなきゃとは思わなかったわ!逆に、今はこだわっているのかしらね?
原:私も自分が…と思いますね。私も子どものしつけとか、自分でちゃんとやりたいと思います。
佐々木:思い入れがあるんですね。
佐々木:私は姑がいたので、産みっぱなしでした(笑)。母乳もやらなかったし、自分が育てなきゃとは思わなかったわ!逆に、今はこだわっているのかしらね?
原:私も自分が…と思いますね。私も子どものしつけとか、自分でちゃんとやりたいと思います。
佐々木:思い入れがあるんですね。
奥村:今は核家族が多いので、保育園に入って学ぶところも多いですね。うちの子は、保育園に行ってから、いっぱいしゃべりだしました。保育園に行くと、いろいろできるようになりますね。
佐々木:ハウスキーパーを家に入れる事に抵抗はないですか?家の中をいろいろ見られるでしょう!?
奥村:お願いする前は鍵を預ける事に抵抗がありました。お姑さんが仕事をしていて以前から利用していたので、口コミを聞いて大丈夫だろうと思いました!お願いすると、こんなに楽な事はないです。母として、どうなんだろうと思いますが(笑)。週に3回、3時間位来てもらって、ご飯とお掃除、それから全自動洗濯乾燥機で洗濯したものを畳んでもらっています。基本的に同じ人が来てくれます。保育園に預け始めた4月、5月は週の半分は熱を出して、同じところにベビーシッターも斡旋してもらいました。病気の時にもお願いできます。経済的負担はありますが、私も夫も常勤で働いているのでやっていけます。熱を出すとベビーシッターをお願いするので、その分費用はかかります。
中野:ちょうど奥さんと、仕事に復帰するかどうか相談しているところなので、参考になります。家事をどうしようかと話していたところです。奥さんはいずれかは仕事に戻りたいと思っているようですが、「自分で育てなきゃ」というのが少しあるので。泣いている子どもを少しあやして、また放っておくと「あんなに泣いているんだから、ちゃんとみて!」とよく言われます。
佐々木:奥さんも疲れているのよ。
奥村:産後は独特で、ピリピリしていますね。お姑さんからも、仕事をすると大変になってしまうから、ベビーシッター使ってみなさいと言われました。
佐々木:産むのだったら、そういう選択肢もありますね。男性は関係ないと思っているかもしれませんね。
中野:のんきに考えていますね。
奥村:女性は高齢出産のリスクも考えますね。
佐々木:女性医師が増えるという事は、女性医師と結婚する男性医師も増えるという事ですからね。男子学生はどう思っていますか?
中村:中には理解のある人もいるけれど、女の子ほど真剣には考えていない人が多いと思います。
佐々木:産まれてみないとわからないですよね。
中野:そうですね。里帰り出産だったのですが、予定日の2か月位前から秋田に帰っていたので、上の先生にお願いして2週に1回くらい会いに行っていました。生まれる時も休ませていただいて、立ち会いました。大変そうだなあと思いながら、おなかをさすったり…(笑)。産まれてからも2か月位、秋田に会いに行っていましたが、新潟に戻ってからが大変でした。最初、子どもと一緒に寝ていたのですが、夜泣きがすごくて寝られませんでした。それで、引っ越すときに部屋が広い所にして、平日は妻が子どもと別室で寝ています。子どもは奥さんに任せて、僕は眠られないから勘弁してくれって(笑)。金曜日と土曜日は、たまに子どもの近くで寝たりします。
佐々木:1年間頑張れば、違ってきますね。
奥村:大分違いますね。でも、うちは今も夜中に起きています。おっぱいやめないので(笑)。夫は全然起きないですね。でも、子どもの夜泣きはしんどいという話はよく聞きます。
選択肢は広く、道は長い
奥村:初期臨床研修の2年間は、小児科で働いてから出産するまでの期間が短くなると思っていましたが、良い経験でした。初期研修がなければ、大人を診ることはできませんでした。夫は整形外科なのですが、初期研修がなければ糖尿病などの内科疾患の管理ができなかったと言っています。
中野:女性医師は、専門の科を決める時、ワークライフバランスを考えますか?すごく気になっていたのですが…。
原:あるかもしれない…。
奥村:打算的になりがちですが、やりたい事をやった方がいいと思います。どこへ行っても楽とは限りません。女性ばかりでも、かえってそれが大変な事もあります。どれが有利という事はないですね。出産がアドバンテージにもなることもあります。今、当直免除で時間外勤務はありませんが、これから女性医師が増えてくると、幼児期はともかく、みんながずっと当直免除、みんなが非常勤職員というわけにはいきませんね。
佐々木:中村さんと有松さんは、何科に進むのか決まっていますか?
中村:まだ、決まらないです。
有松:いろいろ見てから決めたいと思っています。最初から、一つの科だけをみているとよくないかなと思って。実際見てみると科によっていろいろ違いました。
佐々木:自分に合うか合わないかもありますね。
原:最初希望していても、実際まわってみると変わってきますね。
奥村:自分の強み、専門を見つけていきたいですね。
佐々木:専門とは別に、自分はこれをというものを見つけると、やりがいが生まれますね。
奥村:佐々木先生は、どうして保健所長になったのですか?
佐々木:勤務医をずっとやって来たのですが、疲れたなというのと、違う事をやってみたいなと思っていて、ちょうど保健所の誘いがありました。全国から18人が集まって、3か月寮に入って研修に行きました。やってみたら、面白いです。今日のような仕事もできるし(笑)。いろいろな働き方ができますね。
奥村:選択肢はいっぱいありますね。
佐々木:定年後にはクリニックをやってもいいかなとも思ったりします。でも、フルタイムじゃなくて、9時から15時で(笑)。そういうと開業している夫は怒るんですよ(笑)。健康診断もできますしね。70歳を過ぎると、男性医師よりも女性医師が多くなるのよ。長く働けるのだから、焦らないで!
奥村:つい、焦っちゃう(笑)。
中途半端でも大丈夫
奥村:何十年も働くのだから、キャリアという面では、焦らなくていいんだと思いました。久しぶりに研修医や学生の皆さんのフレッシュな話をきけて、結婚とか、昔はそうだったなあと思い出しました。つい、夫に文句を言ってしまうんですけど(笑)。
中野:今日は、女性医師の働く女性としての意見がきけて良かったです。自分と妻だけだと、子育ての意見も凝り固まってしまいます。今日は他の人の意見を聞いて、同じような立場の人がいて困っていたら、自分なりに手伝いたいと思いました。
有松:進路のことで同学年同士では話すのですが、上の先生の話を聞く機会はありませんでした。このような機会に意見やアドバイスをもらえて良かったです。
原:早くキャリアを積まないといけないと焦っていたのですが、子育てのいろいろなサポートがあるんだなとわかりました。これから、まだまだキャリアを積むには時間がありますし、結婚したら、子育てを優先したいです。まず、相手を見つけたいと思います(笑)。
中村:今日は皆様のお話をきけて、これから女性医師としての人生を歩んでいく上で、結婚とか子育てのことを早く考えて行動していきたいと思いました。自分のキャリアについては、焦らずに自分をしっかり持って突き進んでいこうと思います。上の先生方とお話しできる機会を頂けて良かったです。
佐々木:みなさん真面目に結婚したらいい妻、いい母にならなければという思いがとても強いんだなあと思いました。医師として一流なのだけれど、妻として女としては何だが自分が後ろめたいような気持ちを持っている、痛々しさも感じました。そんなことを思わなくても、中途半端でもいいから、結婚して、出産して、いろいろなサポートもあるから、愛されるから、遠慮しないで自分の気持ちを出していってほしいと思います。自信を持って!
(所属等はトークセッション開催時現在です。)